にわとりごや

継続は力なり

小説

妖精さん【短編小説】

妖精さん それはなんでもない、ただの日曜日であった。 どこかの研究所が人々に幻覚を見せる装置を開発したわけでもなければ、どこかの滅びたはずの古代文明が息を吹き返して世界を不可思議な力で覆ったのでもなかった。 世界を平均して眺めてみれば、なんて…

資源不足【短編小説】

資源不足 とにかく現代は大量生産・大量消費の時代であるから、まるで細胞が入れ替わるようにして、次々と新しいものが生まれ、そして古いものは消えてゆく。 地球上の物質には当然限りがあるから、新しいものを生み出すには、廃れてしまった古いものをリサ…

新商品【短編小説】

新商品 哀れな現代のロビンソン・クルーソーの日記データより抜粋。 遭難1日目 気がつくと、私は浜の上に倒れていた。幸運なことに、あの嵐の中で沈没しかかっていた船から、生きのびることができたらしい。 どうやらここはあまり大きくない無人島のようだ…

となりのコソドロ【短編小説】

となりのコソドロ 大学生で男子寮に住む者として、モラルに欠けるというのは常識である。 土足厳禁だというのに土のついた靴で平気で入る、全面禁煙だというのに部屋でタバコ吹かして火災報知器を鳴らす、女人厳禁だというのに平気で女を連れ込む、深夜には…

借りぐらしのアラウンドサーティ

借りぐらしのアラウンドサーティ 「さて、今日は何をしようか」 部屋の中でわたしはつぶやく。無論、部屋の中にはわたし以外誰もいるはずがない。単にわたしの独り言だ。 昨日は何をしたんだっけと思い出そうとして、部屋の真ん中でぐるぐる回りながら記憶の…